2 理人

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下手くそな抱っこでもユキは大人しくしていた。本だって案外好きなのかもしれない。 たぶんオヤジと似ている。 「なぁ理人。だいぶ前になるけど、あの本はどうした?」 「あぁ、あれ」 中学に上がるか上がらないかくらいの頃だったと思う。もう理解できるはずだから、ってオヤジから一冊の文庫本をもらった。 でもそのあとすぐ再婚話が出て、俺はそれを読むどころか捨てようとした。 思い止まってそれはやめたけど、授業をサボって昼寝をするときのアイマスク代わりにしてたからすでにボロボロなんだよな。 「……そのうち読むよ」 「いや、読む読まないは自由だ。おまえの物なんだしな」 オヤジは小さく笑って、息をひとつついた。
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