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一限目が始まって、国語担当の先生も久住君を起こそうと声をかけたけれど、ゆすってもさすっても怒鳴っても、やっぱり彼は微動だにしなかった。
口がぽかんと開いていてちょっとよだれがたれて、黒髪は春の風にふわふわ揺れている。
気持ち良さそうだなぁ。
柔らかそうな、きれいな髪。ついでに寝顔は子供みたいにあどけない。
ぼんやりしていたら、突然視界いっぱいに花吹雪が舞った。
正門の桜が急な突風でいっせいに散ったんだ。
きっと今年はもうこれで見納めなのかな。
そう思ったら、桜吹雪はとてもキレイでまぶしくて、すこしだけせつなかった。
でも、久住君が小さく寝言を言ったせいで、こころはすぐ教室に連れ戻された。
何て言ったのかな。思わずクスクスと笑ってしまった。
口のなかでまだ何か言ってるんだもん。
そんなふうに笑ったのは、もしかしたらすごく久しぶり。
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