1 つぼみ

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一限目が始まって、国語担当の先生も久住君を起こそうと声をかけたけれど、ゆすってもさすっても怒鳴っても、やっぱり彼は微動だにしなかった。 口がぽかんと開いていてちょっとよだれがたれて、黒髪は春の風にふわふわ揺れている。 気持ち良さそうだなぁ。 柔らかそうな、きれいな髪。ついでに寝顔は子供みたいにあどけない。 ぼんやりしていたら、突然視界いっぱいに花吹雪が舞った。 正門の桜が急な突風でいっせいに散ったんだ。 きっと今年はもうこれで見納めなのかな。 そう思ったら、桜吹雪はとてもキレイでまぶしくて、すこしだけせつなかった。 でも、久住君が小さく寝言を言ったせいで、こころはすぐ教室に連れ戻された。 何て言ったのかな。思わずクスクスと笑ってしまった。 口のなかでまだ何か言ってるんだもん。 そんなふうに笑ったのは、もしかしたらすごく久しぶり。
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