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長い上向きのまつげの先をこっちに向けて、
彼女は時間を紡ぐようにゆっくり笑った。
「嬉しいなぁ、会えて」
歌うような声。
「どこかで、会いましたか、わたしたち」
久しぶりに声をだしたノドは、がさがさなうえにだいぶ塞がってしまっていて、話したあと息つぎをしたら、一緒にひゅぅという空気のなる音がした。
「さぁ、どうかなぁ」
彼女は思わせ振りな笑顔を見せた。
「名前なんていうの?」
「神崎、つぼみです」
「つぼみちゃんね。あたしはみどり。ねぇ、あたしのことこれからなんて呼ぶ?」
「これから?」
ビックリしてしまった。
駅で偶然ぶつかっただけの相手にこれからなんてあるんだろうか。
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