きみが空を泳ぐいつかのその日まで

1 つぼみ

授業を熱心に聞いているふりをしながら、なんとなくノートのはじに「ダビニフス」って書いてみた。

最近読んだ小説のなかに出てきた言葉で、気になってわざわざ調べたんだ。

しかもこうしてカタカナで書くと、ファンタジー小説に出てくる登場人物の名前みたい。

久住君が勇者だとしたら、今は戦いをやめて春のひだまりでまどろんでいるところ。

そんな空想で現実逃避をしてしまうのって、いい加減子供っぽいからやめようか。

そんなことを思いながらも、意識はまた自然と久住君のほうに傾いた。
睫毛、長いなぁって。思ってしまった。