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「しかも読みながらちょっと涙ぐんでるんだよ大人の男が。ドン引きじゃない?
試しにさっき読んでみたけど何でこのページで泣けるのかあたしには全然わかんなくって更にイライラしちゃって。でもそれはさ、彼の気持ちを理解できない自分に対してなのかもしれないね」
みどりさんは一気にまくしたてて最後に大きなため息をついた。
そっか、わたしもきっとそう。
わからないことだらけで右にも左にも行けずにいる。
千絵梨や両親の気持ちどころか、自分がどうあるべきで、どうしたいのかさえわからなくて、ずっと苦しい。
「一度はゴミ箱に投げたんだけど、それじゃダメだって反省したの。ちゃんと新品を買って謝ろうと思ってるんだよ。でもすぐには無理、彼にも反省してもらわないと。だから、戒めとしてちょっとだけ預かっててもらえないかな?」
「……わたしがですか?」
「そう。電話やメールなんかよりちゃんと繋がってる気がしない?本屋にいく時も付き合ってほしいし。どうかな?」
彼女の明るい瞳のなかに、くっきりと自分の姿が見えた。
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