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「わたしなんかで、いいんですか?」
「もちろん」
「さっき会ったばかりの他人ですよ?」
「そうだけど、また会いたいもん」
返事に困っていると、彼女は私の顔を覗き込んで目を細めた。
「だからさ、突然いなくなったりしないでね、あたしの前から。あたし達はもう繋がってしまったんだよ」
彼女のその声が、こころの奥の奥のほうまで深く響いた。
「……預かります。またあなたに会いたいから」
少しためらった末に、それをしっかり手のなかにおさめた。
「よかったぁ」
アナウンスが流れて、電車がもうすぐホームに到着することを告げていた。
「読んでみてよ、途中のページだし裏と表しかないけど」
「いいんですか?」
「もちろん」
みどりさんは大きく息を吸い込んで、しっかり頷いてくれた。
それはちいさな紙切れが、わたしの手のなかで特別なものに変わった瞬間だった。
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