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「スカートが汚れてるけど、どうした?」
帰宅したわたしを見るなりお父さんは声色を変えた。
どこかに置き去りにしてしまったお弁当のことで頭がいっぱいでとっさの機転も利かず、転んだと答えたのは間違いだった。
どこで?とさらに追求されて結局しどろもどろになる。
「駅前のパン屋がある……」
そう口ごもっただけでお父さんはわかりやすく怪訝な顔をした。
もう10年以上も前に駅前のあの大通りでわたしは大怪我をしそうになったことがあるらしく、実はそのルートで登下校することは、前々から禁止されていたのだった。
ちいさすぎて何も覚えてはいないけれど、その時のことがよみがえるのか両親はあの通りを毛嫌いした。
あそこを通らなければ学校に行けないわけじゃないけど、足が自然とそっちへ向いてしまうのは、両親が隠していることを千絵梨から聞いてしまったことがきっかけだった。
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