3 みどり

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蒸し暑い夏の夜だったけれど、その時の冷たい汗の温度をなぜだか今もはっきり思い出せる。 「彼女は、って言ってたからその人は女性だね」 「女の人かぁ、どんな人なのかな?どうして教えてくれなかったんだろう」 子供だったけれど、その人にすぐにでもお礼を伝えなくちゃいけないんじゃないかと、そういう純粋な感謝の気持ちでいっぱいになった。 「それはわかんないけど、二人は今も時々会いに行ってるみたいな口振りだった」 「どうしてわたしを連れていってくれないのかな?」 あれからだいぶ時間が過ぎて、無事に成長しているからこそ、わたしが直接頭を下げるべきなんじゃないか、そう思ったら両親の行動に全然納得ができなかった。 「なんか理由があるんだよ、それにこの辺の人じゃないみたいで、お父さんがなかなか休みがとれないから次はどうしようか、なんて話してた」 「そっかぁ」 抱いた疑問に答えもないまま、一度はそこに蓋をしたつもりでいた。 「ドラマみたいだよね、ちょっとこれからも探ってみよっかな」 千絵梨はいたずらな笑みを浮かべていた。
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