4 ふたり

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ちょっと強引に後ろに座らせて、自転車に跨がると左足だけでペダルを漕いだ。 自由にならない右足が邪魔でしかない。 「あの、どこを持てば……」 「テキトーにその辺掴めよ。あぶねーじゃん」 遠慮がちな手が背中辺りに触れた。 「なんか、甘い匂いがするね」 「匂い?ごめん、それ弟のゲロかも」 ユキはミルクを飲んだあとに高確率で吐く。弟のことを隠す必要がないのが気楽だった。 「ううんわたし、知ってる。 これって頑張ってるママの、匂いだよ」 背中にそっと頬を寄せられたような 微かな温度を感じた。 「ゲロじゃなくて?俺からママ臭が?」 ペダルを蹴りながら、吹き出してしまった。 「うん、同じ匂いがする。みどりさんと、一緒だ」 「ふーんそうなんだ。てか誰それ」 神崎さんの言葉を適当に聞きながら、自分からママフェロモンが出ているのを想像してむず痒くなった。
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