260人が本棚に入れています
本棚に追加
「左だけ、袖がしわくちゃだね」
「あぁ、これね」
自分の左袖を見た。
「なんでかいつも忘れるんだよ、右をやったら左を。左やったら右を。せっかちなのかなぁ」
「自分でするんだ。すごい」
「当たり前っしょ」
後ろで神崎さんが笑ったような気がしたから、俺は気分がよくなってガンガン左ペダルを漕いだ。
彼女を乗せて薫風ってやつのど真ん中を突き進むと、一度散った桜の花びらがまた足元からいっせいに舞い上がった。
彼女の自転車はサドルが低くて漕ぎにくかったけど、ギリギリでなんとか教室に滑り込む俺達を想像して、それも悪くないなと思った。
最初のコメントを投稿しよう!