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左肘のあたりに何かが触れた。
それは帰りのホームルーム中のことだった。
左隣からすっと現れた長い指が、四角い小さな紙を机のうえに置いてった。
『弁当箱洗って返す』
中にはそれだけ。
『今返してくれていいよ』
慌ててそう書くとその手紙を返した。
ただの連絡なのに、すごくドキドキしてる。
手紙をひらいた久住君は顔色ひとつ変えずに、今度はお弁当箱をわたしの脇腹のあたりに低く差し出した。
彼のこういう率直さがなんだかまぶしい。
ちょっとだけ、千絵梨に似ていると思ってしまった。
お弁当箱を受けとったあと、この手紙を使ってずっと聞きたかったことを聞けばよかったなと後悔した。
帰りはどうするつもりなんだろうと1日中考えていて、そのことについていつ声をかけようかと迷っていたらあっという間に放課後が来てしまった。
こんなに時間が早く過ぎたのはものすごく久しぶりだった。
もし帰りも一緒なら、昨日とは味付けのちがう玉子焼きの言い訳もできるのに。
あのお弁当はいつもの物とはちがう。だから1日落ち着かなくて仕方なかった。
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