vol.1 日常

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蝉の鳴き声で目が覚めた。 ふと時計に目をやる。時刻は昼を回っていた。 「暑い」 その一言が何よりも先に出てきた。 ここは、田舎。周りには田んぼと畑しかない。 俺の住んでいる町には、コンビニ1つすらない。 代わりにあるとすれば、温泉くらいだろうか。 俺が通っている高校は電車に一時間乗った後、バスに乗って二十分行った先にある。 遠いと思うが違う、家から一番近い高校がそこなのだ。 しかも最寄りの駅まで車で二十分。自転車となれば一時間近くはかかる。 いつもは、朝の五時に起き、六時に家を出て、七時の電車に乗り、七時五十六分のバスに乗り、八時十七分に学校の前に着く。 今日はなぜこんなにも寝ていられるのか、そうそれは、 「夏休み」だからである。 夏休みとは高校生にとってはとても素晴らしいものだ。 部屋を出て一階に降りると、切り分けられたスイカと紙切れがテーブルの上に置いてあった。 紙切れには、 「昼ごはん用意できなくてごめん!!これで我慢して!」 母親が書いたであろう。 「そう言えば今日、遊ぶ約束をしていた気が、、」 そう口に出した途端、携帯が鳴った。朝日からだ。 「もしもし、悪い、今起きた。」 「お前ふざけんじゃねーぞ、今日は蕾と三人で川に行くって言ってたじゃねぇか!!」 「悪い悪い、今からすぐ準備するから待っといてくれ。」 「え、もうお前の家の前にいるぞ。」 「え、もう俺の家の前にいるの?」 「え、そうだけど。」 玄関を開けると確かに朝日と蕾がいた。 「おじゃましまーす。」 そう言うと二人は家に入ってきた。 朝日はすぐに冷房のスイッチを入れた。 朝日は暑がりだから仕方がないことだ。 「このスイカ美味しそー!もらっていい??」 蕾が俺に聞く。 「だめだ。俺の昼飯だ。」 「けち!!」 そう言って頬を膨らませた。ちょっと可愛い。 二人とは小学校からの付き合いだ。まあ、幼馴染というやつだ。 俺たちの小学校は全校生徒二十一人。 俺たちのクラスは、俺、朝日、蕾の三人だけだった。 「とりあえず腹減ったから食べさせてくれ。」 そう言って俺はスイカを食べた。しょっぱい。塩をかけすぎだろ。 食べ終わり、着替えると、俺は言った。 「さあ、行くぞ。」 俺たちは川に向かった。
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