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vol.2 君
しばらく川で遊んでいると、
「ってか、お前の家の近くに新しく家建たなかったか?」
朝日が聞いてきた。
確かに言われてみれば、夏休みに入る前は、近所が工事の音でうるさかった気がする。
「誰か引っ越してくるのかな?もしかして可愛い女の子だったりして?」
「朝日!ここにも可愛い女の子がいるじゃなーい!」
蕾が小さい胸を必死に寄せて朝日にアピールしている。
「でも蕾も女友達が増えたら嬉しいんじゃないか?」
「確かに隼人の言うことも一理あるね。」
しかし、俺たち三人の輪の中に加わるとなると、俺たちのノリについていけるかはわからないが。
なんてったって俺たちは小中高ずっと一緒だから。
日が暮れてきた。ずいぶん遊んだであろう。足や腰が痛い。
「そろそろ帰るか。」
俺がそう言うと、朝日が、
「ちょっと待ったー!」
そう言って大きめの鞄の中から花火セットとバケツを取り出した。だからこんな大きい鞄を持ってきていたのか。
「ちょっとしかないけど花火してから帰ろうぜ。」
「そーだな。」
薄暗い空の下で花火が光っている。
「ってかさ、俺たち部活ない日は遊んでばっかりだよなー、課題とかやってんの?特に朝日。」
「えー、まぁー、一応、やってるかな?」
「それ絶対やってないやつじゃん!私なんかもうそろそろで終わりそうだよ?」
「え!まじかよ!写させてくれよ!」
「自分でやらないと意味がないよー!」
蕾がそう言いながら火の消えた線香花火をバケツに投げ捨てる。
「あっ、、、」
俺の持っていた線香花火も火が消えた。
「これでラストだな!」
そう言って朝日がロケット花火を取り出した。
「おし!じゃあ火つけるぞー!」
高らかと舞い上がった花火は上空で綺麗に弾けた。
なぜか少しだけ感動した。
「よし!片付けして帰るか!」
「そーだな。」
片付けが終わり、元来た道を帰る。
「今日で夏休み半分くらい終わったよなー、なんだかあっという間だったなー。」
「まだ半分もあるじゃん!遊びまくろーよー!」
「お前らほんとに元気だよな。」
「お前が元気なさすぎなんだよ!」
「部活の練習もすぐ休憩するじゃん!もうちょっと体力つけて!」
「あーもう!わかったよー!」
三人の笑い声が響き渡る。辺りはもう真っ暗になっていた。
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