いちょうの実

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―――――なあに。坊っちゃん。案ずることはない。  他の声に紛れて細かく小さくなった鴉の声が、ぼくのもとに届いた。 ―――――この地のあらゆるものから離れて空へのぼる日がすぐに来て、そういうとき、私らは皆、それをさびしいと思うものですよ。  黒い羽が風をつくって遠ざかる音がした。  ぼくの身体はもう、伸びる準備をはじめている。
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