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「おや、坊っちゃんはここにするのですか」
面白半分についてきた鴉が、けらけらと話しかけてくる。
「うるさいな。どうしてぼくにだけついてくるんだ」
「それは決まっているでしょう。坊っちゃんが一番賢くて、形が良くて、いけすかないからですよ。うまくいくかわからない旅路の様子を暇つぶしに見るには適した対象だと思いましてね」
「ああもう。ふゆかいだ」
「それで、どうするんです? 見たところ、人間が作った庭みたいだが、なんだかごちゃごちゃとした場所ですねぇ」
「へえ。おまえ、庭のよしあしがわかるの」
「鴉にもよしあしがありましてね。私は、よし、の方の鴉ですから、こういうものの評価ぐらい出来て当たり前です」
「なるほど。一番賢くて、形が良くて、いけすかない鴉ってわけだ」
鴉をだまらせてから、もう一度その庭を見おろす。
確かに、ごちゃごちゃしている、と言えなくもない。「こういうものがあったらいいな」というものを手当たり次第集めて、片っ端から植えたようで、あかぬけない感じがする。
それでも、そんなことなんか思いもしないといった顔で、皆きらきらと枝や葉や花をひろげていた。
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