第2章 宴ーうたげー

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「今動いても、逆に殺られるだけだ。無謀すぎる。 時を待つのだ」そして十郎は、竹筒をお七の胸元に押し付けた。 お七は、渋々了解した。 「それで、どうするつもり?」 お七の疑問には応えず、十郎はただ黙って義明を見つめていた。 それからある日の事、今川より出馬の要請があった。敵対する軍との小競り合いを、抑え込むと言うものであった。 義明は活気づいていた。 手柄を立てれば、名声にも箔がつく。 「追うのだ!逃してならぬ」細い木立の道に入って義明は叫んだ。 「殿、深追いは危のう御座る。ここはもう引き返しましょう」と蔵ノ新は進言した。 「馬鹿を申すな!敵を生かしてはならん」と義明が叫んだ時、誰かが馬の手綱を引いた。 ヒヒーンッ!と義明の馬が、大きく仰け反った。 「うわっ!」と焦った義明の目の前に、弓矢の矢が飛んできた。 ガッガシッ! 後ろの大木に、数本の矢が突き刺さった。 「十郎か!」蔵ノ新が叫んだ。 十郎が手綱を引かなかったら、義明は串刺しになっていただろう。 そして。また矢が放たれた。 十郎は瞬時に飛び出し、矢を刀で叩き落しながら、敵兵に飛びかかった。 シュッ!ガシッ! 数名の敵兵は、その場であっという間に倒された。 それはまさに、雷神の様な身のこなしであった。 「み、見事じゃ十郎!良くやった」義明はそう言いながらも、肝を冷やしていた。 そしてそれを機に、義明は兵を引き上げたのであった。
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