第1章 野里 十郎という男

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戦国の世は、混乱の時代である。 人が人を殺め、人が国を滅ぼす。 では、人とは一体何者なのか? 動物ですら、同胞は襲わない。 故に人が人を殺めた時、その代償は余りにも大きい。 とある小さな里。ここにも戦の爪痕は残った。 百姓も、女子供も、全てが流れ弾に当たったかのように、理不尽に命を奪われた。 民家は焼かれ、人の屍は石ころの様に、いたる所に放置されていた。 息吹を失った里に、ぽっかり浮かんだ三日月が、辺りを煌々と照らしている。 すると、いくつか重なった死体がゴソゴソと動いた。 そしてその下から、血だらけの若者が這いずり出てきた。まだ10歳くらいであろうか? 泥だらけの顔に、目だけが爛々と輝いている。 おのれ、壬生義明!よくも俺の家族を! 許さぬ…許さぬぞ…。 そして、その若者は夜明けとともに、地獄の閻魔から身体を引きずりながら抜け出して行った。
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