0人が本棚に入れています
本棚に追加
十郎は、武内邸の離れの小部屋に通された。
「何か必要があれば、お申し付け下さい」三吉はそう言って、部屋を出て行った。
十郎は刀と脇差を置いて、畳にごろんと寝っ転がった。
さて、これからどうするか?
壬生の内情は、ある程度調べてある。しかし人のなりについては、直接見定めねばなるまい。
やはり武内という男、この壬生の要であろう。
十郎はそう捉えていた。
すると「誰?」と子供の声がした。
十郎が顔を起こすと、女の子が覗いていた。
まだ8歳位であろうか?
愛くるしい顔をしている。
「あなた誰?」女の子はもう一度聞いた。
「俺は野里 十郎。今日からここに厄介になる。お前は武内殿の娘か?」と十郎も聞き返した。
「うん。私はさより。あなた強いの?」
「さあ、どうかな?」十郎は、はぐらかした。
「そう強くは見えないよね」さよりは笑った。
そして十郎も、笑い返した。
それはまるで、妹の千世( ちせ ) を見ている様であった。
最初のコメントを投稿しよう!