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第2章 宴ーうたげー
壬生は城持ちだが、小さな一大名に過ぎない。
今川の傘下にいるとはいえ、周りは織田、武田、北条に囲まれた激戦区だ。
今宵、武内邸に家臣の四天王が集まった。
宴にうつつを抜かしている、義明に対しての不満や、行く末を案じての事であった。
筆頭の武内 蔵ノ新。
年長で経験豊かな、野田 成政。
力自慢の、猪尾 忠茂。
沈着冷静な、木戸 摂舟(せっしゅう)。
誰もが壬生を、先代から支えてきた。
「殿はどうお考えなのだろう?」
「宴に、要らぬ殺生と。大殿とはえらい違いじゃ」
忠茂と成政が言う。
「要らぬ恨みも買う事もあるかもしれぬ。若い頃から、言い出したら聞かぬからな」と摂舟も、うーんと唸っている。
「いずれにせよ、我らが上手く立ち回らねばならないだろうな」蔵ノ新は、酒をぐいっと煽った。
4人の話が進むにつれて、酒を飲む量も増した。
そして、明日の宴の打ち合わせも終わり、今日はお開きとなった。
帰り際、中庭を通りかかると、誰かが剣を振る姿が見えた。
「おや?あの者は?」摂舟が蔵ノ新に声をかけると「ああ、今日、腕前を買ってくれと門前で立っておった。手合わせをさせてみたが、彦三らをあっという間に打ち負かしおった」と蔵ノ新が説明した。
「ほう、彦三を?」摂舟は顎をさすった。
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