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城内では今宵、宴が催されていた。
舞の姿が美しいと絶賛され、巷で噂されている旅芸人の一座も迎え入れられた。
特にお七は、18でありながら大人の色気と美貌を兼ね備えた、無二の存在と称えられている。
「いやはや、何とも素晴らしい!」義明は酒も程よく回り、より饒舌になっていた。
能楽の鼓や笛の音が、夜の静寂にこだました。
「殿、少しはしゃぎ過ぎですよ」そう言いながら、正室の多岐(たき)も、宴を堪能していた。
そして多岐の隣には、長女のしずめ、嫡男の頼明(よりあき)が退屈そうに眺めていた。
頼明はまだ7つ、能楽を知るにはまだ早く、饅頭ばかりを頬張っている。
16になるしずめは、はあ、と溜息をついた。
退屈だなあ。もっと面白い事ないのかしら。
しずめは美貌であるにも関わらず、男勝りな性格が損をしていると、母からよく言われている。
すると突然、場が騒ついた。
しずめがふと顔を上げると、1人の女性が舞を始めた。
わあ!なんて綺麗なんだろう!
お七の踊る舞は、一瞬にして城内を虜にした。
「これこそ聞きしに勝る姿か!」義明は身を乗り出し、満足げにお七に見惚れた。
そして舞が終わり、お七は袖に隠れて、最後の演目となった。太鼓のけたたましい音が躍動感を増す。
男女6人の派手やかな舞が始まった。
ドドンッドンッ!
城内からは、掛け声を上げる者までいる始末であった。
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