第2章 宴ーうたげー

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盛り上がる城内をよそに、舞台の袖から離れた柱の陰から、誰かが身を潜めて義明を見つめていた。 その眼光は、獲物を狙う獣の様であった。 懐から細い竹筒を取り出し、そこに毒針を仕込んだ。筒を3段に伸ばすと、吹き矢の威力が増す。 そして狙いを定め、その者が息を吹こうとしたその時、誰かに腕を掴まれた。 「はっ!だ、誰?」お七は慌てて振り向いた。 そこには十郎が立っていた。 「今、義明を狙うのはやめておけ」十郎はそう言って、お七から竹筒を取り上げた。 「十郎、何でここに?」お七は驚いた。 そして言った。 「お頭の事、忘れたわけじゃないでしょう?」 十郎は、九段の頭領に育てられた。 山内 九段は、伊賀の忍びであった。しかし、その飛び抜けた実力ゆえ、同胞から弾圧され伊賀を追われたのである。そして新たな同胞を集め、伊賀にも甲賀にも属さぬ集団を作り上げた。 そしてその中に、十郎もお七も身を置いていたのである。 今川に力を貸していた九段は、今川 義元にも色々と進言した。 その中には、素行の悪い壬生 義明を配下に置くのは、後々足を引っ張られる恐れもあるやもしれぬと伝えていたと言う。 それを噂で聞いた義明は激怒し、今川方に九段は敵の密偵であると嘘の噂を流した。 その結果、九段は今川に処刑されたのだ。 それ以来、九段の集団は方々に散って行ったのである。 「あいつは頭の仇!私はその為に旅回わりを続けて機会を待った。何で庇うのさ?」お七は十郎をぐっと睨んだ。
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