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「おい、佐伯。コースでいいか?」小暮さんが佐伯さんに声をかけた。
「ああ、その方が楽だ」
その時、佐伯さんのスマホが振動して、「妻が到着したようだ。迎えに行ってくる」と小暮さんに言って、席を立った。
佐伯さんの奥さんはタイ人だが日本語を喋られた。佐伯さんとは一回り近く離れているので、30歳前半だと言う事だった。
聞いていた通り、彼女は美人で、シックな出で立ちのドレスに真珠のネックレスがとてもよく似合っていた。
私達は立って二人を迎えた。
「小暮さん、お久しぶりです」彼女が言った。
「チャッマニーさんは、相変わらず綺麗ですね」
「小暮さんこそ、こんな可愛い女性と一緒で、イイですね」彼女の日本語は少しカタコトだけれども、十分堪能だった。
食事は美味しく、会話もとても楽しかった。
小暮さんと佐伯さんが昔話で二人だけで夢中になっている間に、私達も女性同士で話し込んだ。
彼女はタイ北部チェンラーイ県の農家出身だった。
佐伯さんがバンコクに駐在中、夏期休暇で訪れたチェンラーイ県のチェンマイ(都市)で知り合ったと言った。
何をしている時に出会ったかは、あえて訊かなかったが、想像は着く。素朴なチャッマニーさんを佐伯さんはとても気に入ったようで、チェンマイ滞在中、毎日会っていたそうだ。
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