第10話 愛人の作法

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それよりも、小暮さんが二回りも年上で、新郎の上司として結婚式に参加する、と言うことで話題が盛り上がった。 ふたりとも、そんな年上の男性とどの様に付き合っているのか、興味津々だった。 小暮さんは年齢よりは若く見られるので、並んでいるときに親子にはなかなか見えない。 かといって、私の見た目からは結婚している様には見えない。 親子にも夫婦にも見えないが、叔父と姪なら通用しそうだ。でも、そんな芝居も邪魔くさく、結果、開き直って、堂々と恋人として振る舞っている、と説明したら、感心していた。 私は、小暮さんとの付き合いに無理も意識もしていないのだが、結果的に小暮さんの気に入りそうな行動を取っていることが多い。 たとえば、向かい合わせの席に座った居酒屋で、「離れてて、つまんない」と言って、小暮さんの横の席に移り、くっついてあげたら、喜んでいた。 ホテルのレストランなどで食事するときは、背筋を伸ばし凜として、軽く小暮さんの腕を取るようにした距離感で歩く。 街中で(人目を気にしない所なら)、私から腕を絡めて歩く。 行きたいところがあれば、「こっち、こっち」と言って、引っ張っていく。 下着売り場の中に引っ張り込んだ時は、さすがに顔を赤らめていた。 酔ったときには、頭をもたせかけて寄りかかって歩く。     
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