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そして、どんな時も、できるだけ手を離さない。
これが私の愛人としての作法なのだろう。
小暮さんが言っていた。
「何だかんだ言っても、結局は見せびらかしたいんだよ、陽菜を。俺はこんないい女と付き合っているんだぞ、こんな可愛い娘に慕われてるんだぞ、ってね」
だから、小暮さんに対して「いい女」「可愛い女」を演じている。
本当の自分は、そんなに甘えん坊だとは思えない。どちらかと言えば、家庭環境もあったので、結構自立していると思う。
ただ、小暮さんが甘やかしてくれて、その居心地の良さに、浸ってしまったのかも知れない。
そうだ、もう一つ、困ったことがあった。
男子学生の車に乗るとき、助手席側で立っていたら「何してるの。早く乗れよ」と怒られた。
小暮さんはいつも助手席のドアを開けてくれ、私が乗るとドアを閉めてくれるので、ついつい、開けてくれるのを待ってしまっていた。
これも、甘やかしのひとつだろう。
ともあれ、小暮さんが喜んでいたら私も嬉しいので、特に苦になることは無い。
まあ、考えれば愛人なんだから、嫌われないように、可愛がられるように、振る舞うのは当たり前だよね。
それが、今は苦労せずに出来ているので、助かる。
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