第3話 軽井沢デート

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先週(お盆だった)ラブホに入った時も、丁度反対の入り口からも別のカップルが入って来た。かなり部屋が埋まっていたので、私はサッとパネル前に行き、空いている部屋から一番安い部屋のボタンを押して、レシートを小暮さんに渡した。 まあ、いわばスーパーで値引きシールを貼っている商品をサッと取るような感覚だ。 レシートを渡してから、少しガサツかなと思ったけれど、安いのを思わず買ってしまうのは、習性だから仕方が無い。 小暮さんには絶対にできない行動だ。 たぶん、小暮さんにとっては少しぐらい値段が違ってもそんなに問題ないのだろうけど、にこやかに「助かったよ、ありがとう」と言ってくれた。それぐらい、小暮さんは私に気を使い、優しかった。 「ふたり、なんだかとても良い組み合わせだと思わないか?」 オードブルが出てきて、たくさん並んだナイフとフォークのどれを使えばいいのか解らず迷っていると、一番外のを使えばいい、と教えてくれながら、小暮さんがフイに言った。 「ウン、そう思います」 私は本当にそう思って言った。小暮さんと付き合いはじめて、色々な事を押しつけがましくなく、学べた。なんだか、世界が広がっている気がしていた。 「陽菜ちゃんと付き合っていると、世界が広がる気がするんだ」私が思っていることと同じ事を小暮さんが言った。 「とても新鮮なんだよ」 「え? 私なにもしてないけど」     
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