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「陽菜ちゃんの話を色々聞くだけで、いい経験だよ。多分、ふたり歳が離れているから、住む世界が違っているんだよ。だからお互いに新鮮なんだ」
「そうですね、そう思います」
本当は、上品な小暮さんと下町的な私とでは、歳以外にも住んでいる世界が少し違う気がする、と思ったが、その事は言わなかった
パンの端にバターを付けて、両手で持ってかじった。
小暮さんがニコっと微笑んだ。
「なにか、間違った?」
「別に、何でも無いよ」
こんなにニコニコしてる時は絶対に何かある。
「何? 言ってください」
「言いたくない」
「いいから!」
「う~ん、パンは、一口で口に入る大きさに手でちぎって、それにバターを付けて食べるんだけど・・・、陽菜ちゃんはそのままで良いと思うよ」
あわてて、パンを皿に戻して言った
「どうして(そのままでいいの)?」
「だって、リスみたいで可愛い食べ方だもの。僕はその方(食べ方)が好きだよ」
そう言って、さあ、食べて食べて、と手を付けていない小暮さんのパンも私の皿にのせ、その皿を私の方に寄せてきた。
私は、「仕方が無いなぁ」そう言って、またパンを両手で持ってかじった。
まだ、暖かくて美味しかった。
ふふ、可愛い、小暮さんが言った。
前回会った時に、気になっていた小暮さんの懐具合の疑問は解消した。
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