第20話「二十二」

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「い、今のは……」  邪魔にならないようにその場を離れるヒロは、脱落した瞬間を反芻していた。  絶好の機会と判断して加速を発動しながら斬りかかった直後、足に何かが引っかかり、炸裂の衝撃によって体勢が崩れた。  あれは恐らく、『(トラップ)バレット』だろう。 『TRバレット』、通称『トラップバレット』は、罠設置系魔技だ。糸を張って引っ掛かった瞬間や、地面に置いて踏んだ瞬間発動するなど汎用性が高い。  一見いい事ずくめの魔技に思えるが、威力は出ないし、発動したら、自分で解除するか敵が引っ掛かるまで魔力を注ぎ続けなければならない。敵の行動を予測し、誘導する。策略に長けた者にしか扱え辛い魔技で、ベックマンは『TRバレット』の使い手でもあった。 (いけると思った時にやられた……)  ヒロは悔しそうに歯噛みする。  相手の油断を誘い、ここぞという場で奥の手を使って倒す。  いつも自分が行なっている勝ちパターンを、そっくり返されたのだ。悔しくない筈がない。ヒロは戦闘の邪魔にならない十分な距離を取ると、仲間の戦いを見守った。 ◇ 「ちっ、あの野郎油断しやがって!」  ヒロが脱落したのを横目に、ジャンが大きく舌打ちする。リーダーが脱落したことで、形勢はチーム・ベックマンに傾いていた。 「『スラッシュ』!」 「『シールド』ッ!」  ヒロを倒したニッタが、ジャンに襲いかかってくる。アイシャの相手はレイジとハルに任せて、ニッタはジャン達との戦闘に加わるようだ。
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