第20話「二十二」

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 全く抵抗せずに脱落したイリヤに、怪訝な視線を注ぐニッタ。それは木の上で様子を窺っていたベックマンも同じだった。 (何であっさりと脱落した……不利な状況を見て諦めたのか?まぁ、あの嬢ちゃんは最近やる気出してるみてぇだけど、昔からあんな感じだったな)  階級戦でイリヤが手を抜いているのは周知の事実だった。それも、相手が上位チームだとそれが露骨になる。  今はしっかりとチームを組んで真面目に取り組んでいると関心していたが、やはり怠け癖はまだ治っていなかったか。不可解な行動に疑問が浮かんでいたが、すぐに納得する。  ベックマンのその考えは、半分当たりで半分外れだった。  戦いの邪魔にならないようヒロ達の下へ来たイリヤに、ジャンが苛ついている表情で物申す。 「おいイリヤ、テメェ何で反撃しなかった」 「……ごめんなさい、これ以上は戦っても難しいと思ったから」 「はぁ!?テメェ、この一戦が大事なこと分かってんのか!?先に脱落した俺が文句を言う義理もねえけどよ、テメェとアイシャだったらまだ挽回の余地はあっただろ!!」 「そうかもしれない」 「ああん!!?」 「ちょっとジャン、落ち着きなよ」  眉根を寄せてイリヤに掴みかかりそうなジャンを抑えると、ヒロは真剣な表情で彼女に問いかける。 「イリヤ、何か考えがあっての事だよね?」 「……うん」 「じゃあいいよ、後はアイシャに任せよう」 「おいヒロ、テメェどんだけお人好しなんだよ……」  理解してくれてほんのり嬉しそうに頷くイリヤに、微笑むヒロと呆れるジャン。  三人は、最後に残っているアイシャに望みを託したのだった。
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