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全く抵抗せずに脱落したイリヤに、怪訝な視線を注ぐニッタ。それは木の上で様子を窺っていたベックマンも同じだった。
(何であっさりと脱落した……不利な状況を見て諦めたのか?まぁ、あの嬢ちゃんは最近やる気出してるみてぇだけど、昔からあんな感じだったな)
階級戦でイリヤが手を抜いているのは周知の事実だった。それも、相手が上位チームだとそれが露骨になる。
今はしっかりとチームを組んで真面目に取り組んでいると関心していたが、やはり怠け癖はまだ治っていなかったか。不可解な行動に疑問が浮かんでいたが、すぐに納得する。
ベックマンのその考えは、半分当たりで半分外れだった。
戦いの邪魔にならないようヒロ達の下へ来たイリヤに、ジャンが苛ついている表情で物申す。
「おいイリヤ、テメェ何で反撃しなかった」
「……ごめんなさい、これ以上は戦っても難しいと思ったから」
「はぁ!?テメェ、この一戦が大事なこと分かってんのか!?先に脱落した俺が文句を言う義理もねえけどよ、テメェとアイシャだったらまだ挽回の余地はあっただろ!!」
「そうかもしれない」
「ああん!!?」
「ちょっとジャン、落ち着きなよ」
眉根を寄せてイリヤに掴みかかりそうなジャンを抑えると、ヒロは真剣な表情で彼女に問いかける。
「イリヤ、何か考えがあっての事だよね?」
「……うん」
「じゃあいいよ、後はアイシャに任せよう」
「おいヒロ、テメェどんだけお人好しなんだよ……」
理解してくれてほんのり嬉しそうに頷くイリヤに、微笑むヒロと呆れるジャン。
三人は、最後に残っているアイシャに望みを託したのだった。
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