375人が本棚に入れています
本棚に追加
/219ページ
◇
レイジ、ニッタ、ハルの三人は、勇者育成学校の入学当時、何となく気が合ってチームを結成した。
結成した頃は他のメンバーを加えてそれなりに戦えてはいたが、一度も銀級には昇格できなかった。
その内、三人以外のメンバーが外れ、新しいメンバーを加えて挑んだが、やはり結果は芳しくない。新しいメンバーが入ったり出たりを交互に繰り返すだけで、中々上手く行かなかった。
レイジ、ニッタ、ハルは勝つために訓練したり作戦を考えたり藻掻き足掻き苦しんたが、八方塞がりの状況に陥っていた。
それでも、この三人だけはチームから離れようとしなかった。それは、これまで一緒にやってきた信頼と結束なのかもしれない。
何となくで結成したチームの筈なのに、この三人でやってやろう、上へ行こうと決意を固めているのだ。
――そんな時だった。
まだ二十歳を超えたばかりなのに、やけにおっさんに見えるベックマンから声を掛けられたのは。
『俺をチームに入れてくれねーか。損はさせねぇよ』
ベックマンは個人能力も高かったが、指導能力がずば抜けていた。
魔技の使い方に応用、チーム戦での立ち回り。彼のお陰で、三人の能力はぐんぐん伸びていった。 最高で金級、現在は一端の銀級上位だ。ここまでこれたのも、全てベックマンの存在が大きい。
頼りにならなそうで、頼りになる兄のような存在のベックマン。その彼も、今年でもう二十二になる。学生でいられる最後の年だ。
現在の成績から考えても、ベックマンが勇者になるのは不可能だろう。
ならば、三人がベックマンに返せる恩は、少しでも多く勝って階級を上げることだ。
金級は勿論、白級を目指す。
だから、こんな所で成り上がりのチーム如きに手間どう訳にはいかないのだ。
最初のコメントを投稿しよう!