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ふいにまばゆい光が夜空を照らし腹のそこに響き渡る爆音をとどろかせた。どおおん、と空気を震わせながら夜空に大輪の花を咲かせる。
「お!はじまったな」
「きれい」
花火が上がると人は一瞬ぽかんとした無防備な顔を見せた後に幸せそうに微笑む。
柳沢も類には漏れず夜空を見上げる横顔が幸せそうに口元をほころばせていた。ぼくの視線は思わずそこに囚われてしまう。
しばらく2人で空を見上げていたら柳沢がぼくの腕を掴んで引っ張った。
「えっ」
「こっち」
有無を言わせずぐいぐいと腕を引いて連れて行かれたのは人気の少ない公園の中だった。
「ここ、実は穴場なんだ」
「そうなの?」
「うん」
お祭り会場の中にひっそりとあった木々に囲まれた小さな公園。
ベンチに腰かけて空を仰ぐと木の上に大輪の花が咲いていた。歩きながら見ていたときよりも、くっきりと大きく見える。
「わ~すごい」
「だろ」
ほら、と冷えたペットボトルを渡され、そういえばさっきから喉が乾いていたことに気がついた。
「ありがと」
「暑いから喉が渇くよな」
「だよね」
柳沢と2人で並んでベンチで花火を見ているなんて、夢のようだった。
現実なんだろうかとほっぺをつねったらちゃんと痛い。それを見ていた柳沢が笑い出す。
「何やってんだよ」
「あーうん、痛かった」
「だろうな」
赤くなってる、とつねった場所をなでられて思わず体が跳ねてしまった。
「……満希?」
ほら、やっぱりおかしいと思われる。
思わず体をすくめたけど、柳沢の手のひらがぼくの頬から離れない。じっと手を当てたままぼくの顔を覗き込む。
視界が柳沢でいっぱいになった。
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