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カランコロンと明るいゲタの音を立てて向かった待ち合わせ場所には、花火まであと3時間はあるというのにどこから出てきたのかわからないくらいの人でごったがえしていた。
櫓の前ではすでに数人が集まっていてぼくの到着を知るとキャ~っと歓声が上がった。
「やだー満希来た来た!元気だったあ?」
「久しぶり~」
高校生のころとは全然違う顔をした女子達がぼくを取り囲む。
化粧だとか髪型だとかが違うだけでこんなに雰囲気が変わるものかと驚くぼくに「満希はかわんないね~」と松田が笑いかけた。
久しぶりに会う松田は以前のボーイッシュな雰囲気とはうってかわって長いまつげをパチパチとさせ、女の子らしい気配を漂わせていた。
「化粧濃すぎるんじゃないの?」とつっこんでやると「うわ、ひっど!」と背中を叩かれた。うん、相変わらず怪力だ。
「あとはー柳沢と向田だね」
「だねー」
ひとしきりみんなと挨拶を交わしていると離れていた時間が嘘だったみたいにあの頃に戻っていく。
ふいに後ろから大きな手に目をふさがれた。
「だーれだっ」
見えなくてもわかる。
「柳沢」
「あ、ばれちゃった?」
パっと手を離してぼくの顔を覗き込む柳沢は相変わらずかっこよくてドキドキと心臓が跳ねた。
それを気取られないように装って、ぷうっとほっぺたを膨らませた。
「そりゃばれるだろ。こんなことするのお前だけだっつーの」
「ちぇ」
誰よりも真っ先にぼくに声をかけてくれたのが嬉しい、なんて我ながら女々しくておかしくなる。
だけど、それを決して知られないようにわざとつっけんどんな態度をとってしまうぼくをあいつはどう思っているんだろう。
「ごめんごめん~」と謝りながら向田が合流して懐かしいメンバーが全員顔を合わせた。
「じゃ、いこっか」
ぼくたちはぞろぞろと縁日を歩き出した。
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