引っ越し

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真っ暗な空から、雨がパラパラと降り出してきた。 空を見上げると、雨の雫と涙が一緒に顔から滑り落ちる。 家に帰りたくない。 頭に浮かんだのは親友の葵の顔。 同じ町内の葵の家はここから10分程。 夕食時にいきなり家に押しかけたら迷惑かもしれない。 葵の家の前で悩んだ挙句、葵の家の近くのコンビニに入った。 ずぶ濡れの私を見て、コンビニの店員さんやお客さんが奇異の目を向けてくる。 「葵、今から会いに行ってもいい?」 「真尋どうしたの? 今どこ?」 恥ずかしくて葵にラインをすると、すぐに葵からライン電話がかかってきた。 引っ越しの話をすると、葵はコンビニに飛んできて、ずぶ濡れの私を抱きしめた。 「私の家に行こ」 葵の傘に2人で入る。 葵は涙が止まらない私の肩をギュッと握ってくれた。 「真尋のお父さん心配してると思うから私から電話しておくね。 真尋、今日は泊まっていきなよ、母には言っておくから」 葵は私を自分の部屋に案内すると、バスタオルと着替えを持ってきてくれた。 葵の優しさに、また涙が溢れる。 お風呂に入って身体が温まると、父の悲しそうな顔が頭に浮かんだ。 高校生の私が1人で東京に残るなんで出来るはずがない。 だけど、鹿児島県に引っ越しは嫌だ。 シャワーを浴びながら、何度も頭を左右に振った。 「真尋、どこにいても親友だよ」 葵のベッドに一緒に入ると、葵は私を励まそうと何度も声をかけてくれる。 葵の言葉で、私は父と一緒に東京を離れる決心をした。
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