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曽木発電所遺構
楽しみにしていた香山部長とのデート。
それも行き先は、部活紹介の時に写真部の部室で見て感動したあの『曽木発電所遺構』。
嬉しくて、いつもより1時間も早く起きた。
「お父さん、今日は『曽木発電所遺構』に行ってくるね。
それと、私、東京の大学に行く事にしたから」
香山部長と、成績が上がってから東京の大学に行きたいと思っている事を父に伝えよう。と話し合ったばかりなのに、調子に乗っていきなり言ってしまった。
「えっ……初めて聞いた……東京の大学か。
行かせてあげたいけど、仕送り出来るお金が……」
私は現実を見ていなかった。
東京の大学に行こうと思ったら、仕送りをして貰わないといけない。
授業料に仕送りに、貧乏な我が家にあるはずがない。
「家から通える大学なら奨学金をもらえば何とかなると思う。 だけど……真尋ごめん」
父が自分を責めている。
「昨日、葵と話してて、東京の大学に行きたいって思っただけだから、まだ決定じゃないの。
お父さんごめん」
父の顔を見ると、私まで悲しくなってきた。
父をこれ以上傷つけたくなくて、逃げるように自分の部屋に戻った。
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