曽木発電所遺構

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「じゃ、行ってくるね」 「気をつけて。 あまり遅くなるなよ」 東京の大学の話はなかった様に、お互い普通に振る舞った。 家を出ると、胸がズキっと苦しくなった。 少し前まで希望で満ち溢れていたのに…… 東京の大学に行けなければ香山部長とは4年間離れ離れになる。 きっとその間に香山部長は彼女をつくってしまう。 ダメ、香山部長を信じなくちゃ……だけど…… 不安な思いのまま、待ち合わせ場所の伊佐高校に着いた。 「真尋、父が乗せてってくれるって。 さあ、乗って」 駐車場に停まっていたバンのスライドドアが開き、香山部長が話しかけてきた。 「よろしくお願いします」 香山部長のお父さんに挨拶をして車に乗り込むと、香山部長のお父さんは後ろを振り向きにこっと頷いた。 香山部長のお父さんへの緊張と、東京の大学に行けないショックからあまり話が続かない。 「真尋、どうした? 元気がないように見えるけど」 香山部長が心配そうな顔を私に向ける。 「あっ、大丈夫です。 元気ですよ」 車の中で暗い話をする訳にはいかない、無理やり笑顔を作ると、香山部長は一瞬困った顔をしたけど、すぐにいつもの香山部長に戻った。 「今から行く『曽木発電所遺構』は夏の間だけしか見る事が出来ないんだ。 それ以外の時は水の中に眠っているんだよ」
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