曽木発電所遺構

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「夏にしか見る事が出来ないなんて神秘的ですね」 香山部長の写真を思い出しながら答える。 「この季節になると沢山の人が写真を撮りにやってくる。 ひと夏のきらめき、みんなその姿を写真に残したいんだよ」 以前、香山部長は良い写真を撮るには対象を好きになる事が大事だって言ってた。 香山部長の写真を見たらわかる。 香山部長の写真からは愛が伝わってくるから。 私は、香山部長が話してくれる『曽木発電所遺構』の話に夢中になっていた。 「着いたよ。 帰りは迎えにくるからラインして。 じゃ、真尋さんまたね」 香山部長のお父さんにお礼を言って私と香山部長は車を降りた。 お父さんはクラクションを一回鳴らすと、車を走らせていく。 「ここが『曽木発電所遺構』なんですね。 こんな綺麗な風景が夏にしか見られないなんて……」 香山部長が撮った写真と同じ風景が私の目の前に広がっている。 異世界にタイムスリップしてしまったみたいだ。 なんて美しい。 この景色をそのまま写真に撮りたい。 何度もシャッターを切る。 この時は、隣に香山部長がいる事も、東京の大学に行けそうもない事も全て忘れて『曽木発電所遺構』 の景色で頭がいっぱいになっていた。 「沢山取れたね、見せてくれる?」 香山部長にカメラを渡すと、香山部長は写真を一枚一枚チェックしてアドバイスをしてくれた。 「夏になると、時間がある時はいつも『曽木発電所遺構』に来てた。 ここに来ると時間の流れが変わるんだ。 僕の悩みなんて、ちっぽけなものだと思えるようになった」
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