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「ちっぽけ?」
「ああ。
だから、頑張ろうって思えた。
真尋、悩みがあるんだろ?」
あっ、やっぱり香山部長は気づいていたんだ。
「東京の大学に行きたいって父に言ったら、行かせてやりたいけどお金がないって……」
思い出したら涙が出そうになる。
「お金か……奨学金使ってもダメかな……」
香山部長が考え込んでいる。
「ダメだと言われました」
「もし東京に来れなくても、僕は月に一度はこっちに帰ってくる。
電話も毎日する。だから心配しないで」
心配するなと言われても、不安になるに決まってる。
「僕と真尋は同じ感性を持っている。だから、僕は真尋に惹かれたんだ。
僕は絶対に真尋を裏切らない。 僕にとって真尋はとても大切な人だから。
たとえ、4年間離れ離れになる事になっても信じてほしい」
私が不安そうな表情になったのに気づいたのだろう、香山部長は何度も信じて欲しいと繰り返した。
信じますと言えばいいのはわかってる、だけど、口が開かない。
香山部長もこれ以上何も言わなかった。 ただ、静かな時間が流れていった。
香山部長の方を見ると、香山部長は『曽木発電所遺構』をじっと見つめている。
私も香山部長が見ている景色に視線を向けた。
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