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何人かの入部希望者と見られる1年生に混じってスナップ写真を見ている。
壮大な『曽木の滝』、まるで西洋の古城の様な『曽木発電所遺構』そして『郡山八幡宮』の写真が並んでいる。
伊佐市にこんな所があるなんて知らなかった。
なんて美しい景色なんだろう。
「良かったら部室の中にも入って下さい」
写真部の部員が私達に声をかけてくれた。
もっと見たい。と引き寄せられる様に部室に入ると、そこには4切サイズの写真が何枚も並んでいた。
写真が大きい分スナップ写真にはない迫力がある。
沢山の写真を見ている中で、『曽木の滝』と『曽木発電所遺構』を撮影した2枚の写真の前で動けなくなった。
『曽木の滝』と『曽木発電所遺構』の写真は部室の前の掲示板に貼られたスナップ写真や部室に展示されている4切サイズの写真にも沢山あった。
それなのに、この2枚の写真は他の写真とは違い、すごいオーラを放っている。
撮影者は2枚とも【香山拓人】さん。
『曽木の滝』の写真は、空の青と雲と滝の白と木の緑が圧倒的なダイナミックさを持って私に迫ってくる。
隣にある『曽木発電所遺構』の写真もまた、西洋の古城の中に迷い込んだ様な感覚になってしまう。
構図のせい?それとも1番美しく見える日を選んだから?
それもあるだろうけど、それだけではここまで惹き付けられない。
時間を忘れ、2枚の写真の世界の中に入り込んだ。
「僕の写真を気に言ってくれてありがとう」
急に声をかけられ驚いて声のする方を見ると、180センチくらいで中肉中背、柔らかな髪、優しげな瞳の男子が立っていて、何人かいた1年生はいつの間にか誰もいなくなっていた。
急に現実の世界に戻され、オドオドしてしまう。
「えっ……僕の写真って……香山拓人さん?」
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