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言われて私はやっとカバンを置く。
教室に入ってきたらこれだもの。落ち着く暇もなかった。
ため息と同時に座ってみたら、長い髪が机にかかって邪魔なことに気づく。すぐに手首に付けていたシュシュを使って髪を纏める。
ポニーテールにしたら、やっといつも通りの自分になれた気がする。
「朝、髪をセットする時間もなかったの?」
「うん、ちょっと落ち込んだまま寝て。起きたら朝ごはんも食べられないほどに遅起きしちゃってさ。最悪」
雪乃がぽんぽんと頭を撫でてくれる。優しさが痛い。
「雪乃と話してると、このドス黒い心を殺したくなる」
「夏海が特別ドス黒いわけじゃないよ。わたしにはクラスメイトの対応の方が黒く見えるけど?」
大きな声で雪乃が言ったものだから、クラスが一瞬しんと静まり返る。やっぱり私の噂をしていたのか。
「とにかく、噂の訂正をして。なにが合っていて、なにが間違っているの?」
雪乃に言われて昨日のことを思い出す。
あのヤンキーから逃げて、私はホテルなんかではなくラーメン屋に駆け込んだんだ。
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