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「財布を忘れたの」
「財布?」
「私がラーメン注文したのに、財布忘れてお金がなくて」
「昨日はサンドイッチ食べてたじゃん」
「教室に忘れたの」
私は机から昨日忘れた財布を取り出した。
まさかの天使くんに、二人分のラーメンを支払わせてしまった。そして、ラーメン屋を出た後に言われてしまったんだ。
『さっきのがカツアゲだって言いましたよね? だったら、先輩のこれもカツアゲと変わらないじゃないですか』
返すからと言ったのだけれど、天使くんは冷たい目を私に向けていた。
『最低……ですね』
出会ってすぐに嫌われるという人生初の大事件が起こった。
誰に嫌われても大丈夫だ。でも天使くんにあんな目を向けられて、胸にマンホール並の穴があいた気分。
「夏海、泣かないでよ」
「天使くんを守りたかっただけなのに」
「そうね」
雪乃に撫でられると落ち着く。子供みたいだけど、周りの視線に耐えられない今は子供でいたい。
「なんかさ、私ってすごく不運じゃない?」
「財布ないあたりがね」
「……やっぱり」
「あとさ」
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