第四話「天使くんを待ち伏せ」

2/6
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/222ページ
 ***  廊下には知らない顔があふれていた。違うと言ってもたった一年。新入生たちのいる三階は別世界みたいで緊張する。  去年は同じ場所を使っていたはずなのに、もう彼らの色に染まっている。  教室から出てくる彼らのどれも、私が捜している人じゃなくて焦る。これだけいたら見落としていても不思議ではない。  天使くんはすでに帰ってしまったのかな。  誰かに聞こうか。名前も知らないのに、どうやって?  でも、ここで突っ立っていたって何も変わらない。 「名前くらい聞いておくんだった」  じっと廊下をくまなく見ているからか、怖い先輩が来たとか思われてるんだろうな。  これが雪乃だったらだいぶ違うんだろう。一緒に来ればよかった。  でも個人的な事情だし、巻き込むのも申し訳ない。  そもそも雪乃がいる前で天使くんと話すなんて無理だ。緊張する、恥ずかしい!!  しかし視線が痛い。  すごく怖がっている子もいれば、奇異なものを見るような子もいて、高校生活が終わったような気分。ずっと平和に過ごしてきたのに、最悪。
/222ページ

最初のコメントを投稿しよう!