第一話「天使くんを保護しました」

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「財布忘れちまってさ、金貸してくんねぇ?」 「お金、ですか?」 「そう。帰れなくてオレたち困ってんだよ」  ゴールドに輝く二人のネクタイピンは、三年である証。私はシルバー。そして新入生はブルー。  先輩か後輩かは今はどうでもいい。どう見てもカツアゲの現場じゃない。 「いいですよ」  素直すぎか!!  あのにこやかな表情、疑いもせずに出そうとしている財布。  純粋すぎるから!!  それを見た瞬間、私はなにも考えずに飛び出していた。 「アンタたちなにしてんの!?」  驚いた二人が振り向き、新入生の男子もきょとんとした顔を向ける。 「こんにちは」  なんだろう。この優しい顔。柔らかい物腰の新入生。男の子なのにすごく可愛くて抱きしめたくなる。 「威勢よく出てきたけど、あんた二年か」  彼らが私のネクタイピンを見て笑う。年下ってだけで馬鹿にするのは、やっぱり人間として好きになれないタイプ。 「あなた、財布はしまっておきなさい」  私が新入生の財布を無理やりポケットに突っ込む。 「なんだよ。金がなくて帰れねぇから貸してくれって話をしてんだよ」  その典型的なセリフはカツアゲだと、私は思うのだけれど。
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