13人が本棚に入れています
本棚に追加
/222ページ
「財布忘れちまってさ、金貸してくんねぇ?」
「お金、ですか?」
「そう。帰れなくてオレたち困ってんだよ」
ゴールドに輝く二人のネクタイピンは、三年である証。私はシルバー。そして新入生はブルー。
先輩か後輩かは今はどうでもいい。どう見てもカツアゲの現場じゃない。
「いいですよ」
素直すぎか!!
あのにこやかな表情、疑いもせずに出そうとしている財布。
純粋すぎるから!!
それを見た瞬間、私はなにも考えずに飛び出していた。
「アンタたちなにしてんの!?」
驚いた二人が振り向き、新入生の男子もきょとんとした顔を向ける。
「こんにちは」
なんだろう。この優しい顔。柔らかい物腰の新入生。男の子なのにすごく可愛くて抱きしめたくなる。
「威勢よく出てきたけど、あんた二年か」
彼らが私のネクタイピンを見て笑う。年下ってだけで馬鹿にするのは、やっぱり人間として好きになれないタイプ。
「あなた、財布はしまっておきなさい」
私が新入生の財布を無理やりポケットに突っ込む。
「なんだよ。金がなくて帰れねぇから貸してくれって話をしてんだよ」
その典型的なセリフはカツアゲだと、私は思うのだけれど。
最初のコメントを投稿しよう!