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あらかた片付くと、小さな文机と裁縫道具が出てきた。
文机の引き出しを開けると指輪があった。
オレンジ色の石がはまった銀色の指輪だ。
「あった! これ?」
俺が指輪を見せると少女が頷いた。
「これを誰に渡せばいいの?」
「ハルカ……」
「その人は、どこにいるの?」
「……」
アヤナは黙ったまま、立ち上がった。
白いワンピースに裸足。
スーッと移動して出口に向かうかと思いきや、壁を通り抜けていった。
「おいおい。俺が通れないよ」
呆然と見送っていると、壁の中からスーッと戻ってきた。
そのまま、スーッと台所に向かった。
「ちゃんと聞こえているんだ」
口数は少ないが、意思の疎通は可能だ。
「終わったか?」
「あ、はい」
「お、何か見つけたか?」
「あ、これ、そこの机から……」
「高級な指輪か? だから、すぐに報告しろって!」
「すみません……、あの……」
「なんだ?」
「これ、相続人に渡すんですよね」
「そういう契約だからな」
「そうですよね」
勝手に持ち出して渡すことはできない。
その相続人がハルカなら万事解決なのだが。
アヤナは台所に立って待っている。
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