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「あの、お願いがあるんですが、渡すときに俺も同席していいですか?」
「なぜ?」
「実は、この指輪は……」
こんな時、なんて言えばいいんだ?
「この指輪は……、なんだ?」
「渡すべき人がいるようなんです」
「え? まあ、そうだよな」
「その人の元に行きたがっているんです」
「急に、何を言っているんだ?」
「俺、この指輪の意思が分かるんです。ハルカという人のところに戻りたいと言っています」
どう言いつくろっても、理屈が通らない。
いっそ、開き直ったほうがよさそうだ。
「お前、大丈夫か? ああ、あれか。その指輪が欲しいのか?」
「違います。ちゃんと渡したいんです。この指輪の正当な持ち主に」
「ああ、分かった。もうすぐやってくる相続人に渡すときに一緒にいろ」
「ありがとうございます!」
俺は深々と頭を下げた。
アヤナが俺にほほ笑んだように見えた。
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