1.幽霊少女のお願い

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 部屋のゴミと家財が一掃されて何もなくなった長屋は、すがすがしくなった。  ものがなくなると虫もどこかに消えていく。  もう、マスクは必要ない。  そこに、依頼人であるオーナーと、故人の娘だという二人がやってきた。  草野が片付け中に見つけた貴重品を渡した。 「位牌、現金、通帳、日記帳、指輪がありました」 「日記帳はいらないわ。捨てて」  50代と思わしき娘は、古びた日記帳を横に避けた。  アヤナは黙って娘を見ている。  娘は通帳の中を見て、ため息をついている。 「ほとんど入っていない……」  現金も小銭しか残っていなくて、相当、苦しい生活だったんじゃないかと想像できた。 「位牌は父のだわ」  娘は、位牌を横に置くと、オレンジ色の石の指輪と手に取って眺めた。 「この指輪もあったの?」 「はい。寝室の机から見つかりました」  俺は、見つけた時の状況を話した。 「これ、ガラスの偽物よ」 「そうだったんですか」 「私が子どものときに母の誕生日に贈ったものなの。まだ持っていたのね。とっくに捨てられたと思っていた」 「え?」  俺はアヤナを見た。  アヤナは黙っている。
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