2.子どもの霊とサラリーマン

2/10
前へ
/191ページ
次へ
「今日の片づけ先は、一人暮らしのサラリーマンのアパートだ」  草野と向かった先は、単身者用の賃貸マンションで、今度はさすがにゴミの山はないだろうと高を括った。  草野が呼び鈴を押すと、明るく名乗った。 「浜田さん、こんにちは、ハッピークリーンです」 「どうぞ」  中から30代のサラリーマンらしい男性が出てきた。 「よろしくお願いします」  腰が低い。  部屋に入らせてもらった。  生活ゴミが散乱している。 「汚いでしょ」 「綺麗な方ですよ」  草野が社交辞令を口にした。  ゴミ屋敷ほどではないから綺麗な方かもしれないが、いや、なかなかの散らかし具合。  カーテンレールに綺麗に並んでいるのは、仕事用のスーツのみ。 「仕事が忙しくて、全然、掃除ができないんですよ。ゴミを出す暇もなくて。変な時間に出すと大家に怒られるんですよね」 「専用のゴミ置き場はないんですか?」 「あっても、外置きのむき出しなんで、猫やカラスがくるから指定の時間以外ダメなんです。いつもでよければ、休日に出すんですが。あと、分別もうるさくて。正直、毎日早朝から深夜まで仕事していると、分けている暇がないんです。飯を食って風呂にはいって、洗濯だってしなきゃならないし。生きていくだけで精一杯です」  業者に頼めば一緒くたに運んでもらえるから、楽なのだろう。
/191ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加