112人が本棚に入れています
本棚に追加
「今日の片づけ先は、一人暮らしのサラリーマンのアパートだ」
草野と向かった先は、単身者用の賃貸マンションで、今度はさすがにゴミの山はないだろうと高を括った。
草野が呼び鈴を押すと、明るく名乗った。
「浜田さん、こんにちは、ハッピークリーンです」
「どうぞ」
中から30代のサラリーマンらしい男性が出てきた。
「よろしくお願いします」
腰が低い。
部屋に入らせてもらった。
生活ゴミが散乱している。
「汚いでしょ」
「綺麗な方ですよ」
草野が社交辞令を口にした。
ゴミ屋敷ほどではないから綺麗な方かもしれないが、いや、なかなかの散らかし具合。
カーテンレールに綺麗に並んでいるのは、仕事用のスーツのみ。
「仕事が忙しくて、全然、掃除ができないんですよ。ゴミを出す暇もなくて。変な時間に出すと大家に怒られるんですよね」
「専用のゴミ置き場はないんですか?」
「あっても、外置きのむき出しなんで、猫やカラスがくるから指定の時間以外ダメなんです。いつもでよければ、休日に出すんですが。あと、分別もうるさくて。正直、毎日早朝から深夜まで仕事していると、分けている暇がないんです。飯を食って風呂にはいって、洗濯だってしなきゃならないし。生きていくだけで精一杯です」
業者に頼めば一緒くたに運んでもらえるから、楽なのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!