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占いなんて信じていない俺は、次の瞬間にはすっかり莉緒の忠告を忘れた。
仕事に行くと、草野から一人で行って欲しいと頼まれた。
「勝目君、男性一人暮らしのマンションから依頼が来たんだが、向こうが一人でいいというんだ。行ってもらえるかな」
二人よりは一人の方が安い。
たまに、自分も手伝うから一人でいいという要望もある。
「わかりました」
「名前は、土屋様。これが住所」
顧客カードを受け取ると、軽トラックを運転して依頼先に向かった。
目的のマンションに到着。呼び鈴を鳴らす。
出てきた男性に、第一印象良くなるよう元気に挨拶した。
「こんにちは、ハッピークリーンです」
「セールス?」
依頼したことを忘れたのか、怪しまれている。
「ご依頼の片づけに来ました」
「片づけ? ああ、今日だったか。ちょっと都合が悪くなってしまって、キャンセルできないかな」
「当日キャンセルですと、料金が100%かかります」
「100%?」
数秒考えると、「やっぱり頼むよ」と言ってきた。
「承知しました」
「乗ってきたトラックだけど、家の前に長時間置かれると近所から苦情が来る。コインパーキングにでも止めてきてよ。料金は請求してくれていいから」
「承知しました」
ゴミがまとまったらトラックを家の前に戻して積み込めばいいので、近くのコインパーキングに移動して停めるとゴミ袋を手に戻った。
「ご依頼内容の確認ですが、生活ゴミの廃棄と掃除機掛けですね」
「ああ」
「では、始めさせていただきます」
手あたり次第に、散らかった生活ゴミをゴミ袋に詰め込んでいく。
『ウー、ウー』
うめき声が隣の部屋から聞こえてきたので、手が止まった。
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