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(なんだろう?)
生きている人間の声じゃないことは、無反応の土屋を見ればわかる。
気になったが、依頼主の土屋が見ているので仕事の手を休められなくて、見に行くことができない。
「私が見てくるよ」
アヤナが様子を見に行き、すぐに戻ってきた。
「若い男の幽霊がいるが、とても混乱しているようだ。どうも、自分が死んだことが理解できずにいるみたい」
「死んだことに気づいていない?」
「ああ。死の直前のままで、苦しんでいる」
「どういうこと?」
「死んだばかりなんだろう」
死んだばかりなら、幽霊は死体のそばにいるものだが……。
「死因は?」
「首を盛んにかきむしって口から泡を吹いているから……、毒死?」
「いや、そうとは限らないだろう。窒息死かもよ」
「でも、窒息死するような道具はなかった」
アヤナは、再び部屋の中を見てきた。
「やはり、ない。どうやって死んだのかわからない」
気になった俺は、土屋に、「こっちも片づけますね」と許可を取り、片づけを進める振りで隣の寝室に入った。
土屋は、黙って後ろから見ている。
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