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土屋の幽霊について。
殺された直後は相当錯乱していたが、その後、落ち着いた。
強盗殺人犯が捕まり、死体も家族に引き取られて弔われたことで、苦しみから解放されてあの世に旅立っていった。
今回の立役者はアヤナだ。
「私だって、役に立っただろ」
アヤナは偉そうに言った。
「あんなに大胆な攻撃をするとは驚いたね」
「視力を奪われたら、どうしようもなくなるだろ。それを狙ったんだ」
「命拾いしたよ。ありがとう」
お礼の言葉に、アヤナは満足した笑顔になった。
「これ、美味しいな。最中は大納言に限る」
あんこ好きなアヤナは、うまそうに食べている。
俺も最中を頬張った。
恐ろしい目に遭わせたお詫びだと、草野がくれた最中だ。
「そういえな、あのタロット占いが当たったんじゃないか?」
「ああ、そうだった」
莉緒のタロット占いを思い出した。
死ぬかもしれないと忠告されたが、すっかり忘れていた。
覚えていても何の役にも立たなかったが。
「俺、そんなに不運なのかな。殺されそうになり、振られ、幽霊に憑かれ……」
「幸運と不運は同じだけくる。これからは、運も向いてくるよ」
アヤナは、2個目の最中に手を伸ばしながら慰めてくれた。
―― 終わり
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