最終話.別れ、そして……

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「起きろ、正直(まさなお)」  気持ちよく寝ているところを、アヤナに無理やり起こされたので俺は少し不機嫌だった。 「なんだよ……」  枕もとの時計を見ると、まだ朝だ。 「今日は仕事もないし、もう少し寝る」  2度寝しようと頭から被った布団を、アヤナが引きはがした。 「聞いてくれ。とうとう、あの世へ行く日となった」  その言葉で目が覚めた。 「え? アヤナ、成仏するの?」 「そうだ。期限がきてしまった」  アヤナは、とても寂しそうな目をした。 「そうか。良かったな」  俺は、布団に潜り込む。 「それだけ?」 「それだけ」  布団の中から答える。 「冷たいね」 「そうだな。それとも、厄介払いができて嬉しいと喜ぶべきかな」 「厄介者か……。ウ……」  アヤナは泣きそうになったかと思うと、それを我慢して悪口を言い始めた。 「バーカ! バーカ! お前なんか、一生、一人だ! 毎日不幸に見舞われろ!」  精一杯の罵り。 「あの世からずっと呪ってやる!」 「成仏しようって奴が……、そんなこと、できないだろ……」  俺の声が震えている。
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