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「そいつがゴミを次々と拾ってくるんだ。その結果が、あれだ」
「え、アヤナが溜めたんじゃなかったの?」
「違う。私は捨てようとしたんだが、それ以上に持ち込まれて追いつかなかった」
男と暮らして痛い目にあっても別れなかったこと。
自分の恥部をさらすようで言えなかったのだろうと推察する。
「私が病気になって働けなくなると、男はお金を持ち出してさっさと逃げていった。私とゴミを置いて」
「ひどい男だな。でも、アヤナもそんな男を連れ込むからだよ」
「寂しかったんだ。あんな男でも、いないよりマシだと思っていた。死んだところで、寂しさは埋まらない。成仏もできず、鬱々と座っていた。そこに、正直がやってきた」
「仕事だったからな」
「こんな私を気に掛けてくれたことは、仕事じゃないだろ? それがとても嬉しかった。それで憑いた」
「仏心を出すもんじゃないと、あれから後悔しまくったよ」
「正直に救ってもらえなければ、ずっとあそこにいただろう。私を捨てた男への恨み、気に掛けてくれない娘への恨みを抱えて。恨みによって、私は身動きがとれなかったんだ」
「今はもう恨んでいないのか?」
「ああ。正直といたら楽しくて、恨みも薄れていった。そうしたら、この世にいる理由がなくなってきて、体が勝手に浮くんだよ」
アヤナが力を抜くと、体は自然と上に浮かんでいく。
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